2016年01月22日

激安楽器のこと

最近は安い楽器が出回るようになり、当教室の体験レッスンに持参される方も増えてきました。しかし、やはり「安かろう悪かろう」の印象が拭えないだけでなく、本当に粗悪なものもあるのです。

昔は時計屋さんまで製作に関わったほどの精密機器です。だから、決して安く作ることはできません。一つキイを押すと必ず二つ以上ふさがるような設計になっているのですから、簡単な造りでないことは明らかです。これが安く作れるということは、どこかでコストカットをしているというわけです。安い素材は折れたり曲がったりして使い物にならないし、職人の給与を押さえれば仕事の質が下がります。いずれにしても決していい作りにはなりません。

また、指の代わりに穴を塞ぐ「タンポ」と呼ばれるパッドは、穴を密閉するためにいまでも日々技術革新が行われている大変むずかしいものです。季節の変わり目や天候の悪い日は間違いなく塞ぎが悪くなります。スポーツの応援に借り出されるブラスバンドのみなさんの楽器は、タンポにとっては非常に苛酷な環境です。

頭部管は、単に穴を開ければよいものではなく、鳴らしやすさを優先するのか、音色を優先するのかで全く変わってしまいます。一般的に、鳴らしやすい楽器は穴が大きく、音色を求める楽器は切り口が滑らかになっています。これも、穴を削る専門の職人がいるほどなのです。でかいからいいというわけではなく、かえって鳴らしにくくなってしまうものもあります。一部の激安楽器に見られます。

また、安い割にはずいぶん鳴る印象がある楽器は、ほぼ間違いなく管厚の薄い洋銀製です。洋銀は比較的丈夫な素材ですが、薄いということはやはりもろさがありますから、できれば回避したいものです。

そして、これがいちばん大事なこと。壊れても、日本国内のショップではほとんど修理を受け付けてくれません!理由は、合う部品がほとんど存在しないためです。仮に受け付けてくれても、修理代金は1万円。これだけでも楽器の値段に追いついてしまうのです。しかも、そこまでしても性能が良くなるわけではありません。だったら買い換えてしまったほうが早いのです。
でも、それでいいんですか?楽器に愛着はないのですか?かんたんに捨てられますか?そんなことでは上達は望めないと思います。

運搬も、普通に宅配便で送ってはいけないのです。
宅配便の仕分け作業をアルバイトでやったことがある方はよくご存知だと思いますが、荷物は金属製のベルトコンベアを流すのが通例です。もし、ここにフルートを流したらどうなるか・・・フルートのメカニズムは振動、特に縦向きに大変弱いのです。「自転車のかごに入れてはいけない」というポリシーをもっとも強く主張する某老舗メーカーでは、わざわざ自転車に乗る方向けの専用バッグ(たすきがけに背負えるタイプ)を開発するほどなのです。

宅配便の現場をちょっとレポートしてみましょう。

大まかな仕分けは上段の高速コンベア(ゴム製)に乗せられ、大きな羽根で弾き飛ばされます。
その後、下段へ下ってくるのですが、この時軽いものは縦に転がってしまいます。稀に途中でひっかかってしまったり、落ちてしまうものも。(縦揺れの振動が最も加わる)
下段では金属ローラー製のコンベアを流れます。
というわけで、なんと、振動だらけなのです!!!

「われもの注意」の赤札を貼ればよいとお思いですか?ダメです!実は「エアキャップ(いわゆる「プチプチ」です)で包まれた軽いものはベルコンに流してよい」というガイドラインがあるのです。なんという恐ろしい事実!
激安楽器は、これらの悪条件がすべて揃っているのです。オークションで落札すると、間違いなく宅配便で送ってきますから、その時点でアウトです。

おわかりいただけましたか?激安楽器はとにかく「壊れたら使い捨て」の覚悟が必要です。よく肝に銘じておいてください。
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posted by NS at 12:38| Comment(0) | 楽器の話
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