2016年01月22日

防音対策〜近隣への苦慮

<「楽器禁止」のお住まいの方へ、防音対策のアイデア>

おそらくふつうのフルート教室ではこんなことは教えてくれないと思いますが(笑)ぜひ参考にしていただければと思います。

※残念ですが、完璧な防音は不可能です。なぜかというと、音は空気を伝わってゆくからです。完全に遮断するには空気の行き来を無くさなければならず、密閉空間になってしまいます。しかしそれでは人は窒息してしまいます。ですので、ここに列挙するアイデアはすべて「音を小さくする」という考え方であることをご理解下さい。
(参考:ヤマハアビテックス資料)

・フルートの音は上に飛びます。ですので、引越される場合は上層階のほうが有利です。(防音ボックスの値段で管楽器用とピアノ用では30万近くの価格差がありますが、これはピアノが床防音を強固にしていることに対し、管楽器はすべて音が拡散するため床防音が薄くてよく、それで安くなるのです)
・コンクリート打ちっぱなしの建物はかなり高い密閉度で防音効果大です(実例として、付近に高速道路があるため、窓際もかなり強固なシーリングが施されているマンションがあります)
・ガラスがいちばん音を透過します。ですから、窓際では練習しないように。
・壁際に洗濯物や衣類を吊るすだけでも「吸音効果」があります。
・防音加工は「吸音」と「遮音」を重ねたものです。市販の「遮音カーテン」だけでは効果は薄いので、吸音材として厚手のカーテンを併用しましょう。
・できれば天井への防音配慮を。防音マットを貼るだけでも効果あり。
・風呂場は密閉度では群を抜きますが、高い湿度で楽器が傷みます。また、響きすぎる傾向にあります。
・ユニットバスは排水管や換気扇から音漏れがしますので、注意しましょう。
・昼と夜では音の飛び方が違います。昼間はただひたすら上昇するだけですが、夜間は地を這って拡散します。夜間に練習される場合は「吸音」を念入りに。床防音に気を使うのもよいと思います。
・吸音効果のあるもの・・・厚手のカーテン、じゅうたん、衣類、布団などやわらかい繊維質のもの
・遮音効果のあるもの・・・防音カーテン(鉛が入っています。防弾チョッキ並みです)重量のある扉、木製の雨戸(吸音材併用で高い効果。金属製はまったく意味なし)二重窓(シーリングがしっかりしていること)


線路沿い、高速道路の近くなど、騒音のひどい地域の住宅は、その対策で防音が非常にしっかりしています。このため、音楽に携わるには、防音上は最適な条件ということになります。これらの住宅では、音楽に関する苦情は皆無です。また、居住条件的には不利なため、家賃や価格の相場も低めの傾向にあります。

なおこれらの地域は振動もありますので、録音を目的とする場合はあまり向いていません。一般的に録音スタジオは地下階に作られる事が多いようです。

また、この振動を抑えるために大変苦心したホールが、池袋の東京芸術劇場です。真下を地下鉄有楽町線が通っており、騒音と振動を避けるために、地上5階まで吹き抜けの構造になっているのです。さらに、大ホールはその上に設置されている念の入れよう。地下階の小ホールは完全防音のため音響的にデッドな構造で、主に演劇用に貸し出しているのだそうです。


注意!>ピッコロは夜10時を過ぎて練習してはいけません!人間の可聴範囲ぎりぎりの超高音域で、しかも音が拡散する時間帯に突入するからです。気をつけてくださいね。

私の実体験をもとにした記事がこちらにあります。よろしければ参考にしてください。
・再開の機運に・・・
・防音環境を求めて
・楽器練習の環境〜実体験を踏まえて
posted by NS at 13:09| Comment(0) | 防音のアイデア

激安楽器のこと

最近は安い楽器が出回るようになり、当教室の体験レッスンに持参される方も増えてきました。しかし、やはり「安かろう悪かろう」の印象が拭えないだけでなく、本当に粗悪なものもあるのです。

昔は時計屋さんまで製作に関わったほどの精密機器です。だから、決して安く作ることはできません。一つキイを押すと必ず二つ以上ふさがるような設計になっているのですから、簡単な造りでないことは明らかです。これが安く作れるということは、どこかでコストカットをしているというわけです。安い素材は折れたり曲がったりして使い物にならないし、職人の給与を押さえれば仕事の質が下がります。いずれにしても決していい作りにはなりません。

また、指の代わりに穴を塞ぐ「タンポ」と呼ばれるパッドは、穴を密閉するためにいまでも日々技術革新が行われている大変むずかしいものです。季節の変わり目や天候の悪い日は間違いなく塞ぎが悪くなります。スポーツの応援に借り出されるブラスバンドのみなさんの楽器は、タンポにとっては非常に苛酷な環境です。

頭部管は、単に穴を開ければよいものではなく、鳴らしやすさを優先するのか、音色を優先するのかで全く変わってしまいます。一般的に、鳴らしやすい楽器は穴が大きく、音色を求める楽器は切り口が滑らかになっています。これも、穴を削る専門の職人がいるほどなのです。でかいからいいというわけではなく、かえって鳴らしにくくなってしまうものもあります。一部の激安楽器に見られます。

また、安い割にはずいぶん鳴る印象がある楽器は、ほぼ間違いなく管厚の薄い洋銀製です。洋銀は比較的丈夫な素材ですが、薄いということはやはりもろさがありますから、できれば回避したいものです。

そして、これがいちばん大事なこと。壊れても、日本国内のショップではほとんど修理を受け付けてくれません!理由は、合う部品がほとんど存在しないためです。仮に受け付けてくれても、修理代金は1万円。これだけでも楽器の値段に追いついてしまうのです。しかも、そこまでしても性能が良くなるわけではありません。だったら買い換えてしまったほうが早いのです。
でも、それでいいんですか?楽器に愛着はないのですか?かんたんに捨てられますか?そんなことでは上達は望めないと思います。

運搬も、普通に宅配便で送ってはいけないのです。
宅配便の仕分け作業をアルバイトでやったことがある方はよくご存知だと思いますが、荷物は金属製のベルトコンベアを流すのが通例です。もし、ここにフルートを流したらどうなるか・・・フルートのメカニズムは振動、特に縦向きに大変弱いのです。「自転車のかごに入れてはいけない」というポリシーをもっとも強く主張する某老舗メーカーでは、わざわざ自転車に乗る方向けの専用バッグ(たすきがけに背負えるタイプ)を開発するほどなのです。

宅配便の現場をちょっとレポートしてみましょう。

大まかな仕分けは上段の高速コンベア(ゴム製)に乗せられ、大きな羽根で弾き飛ばされます。
その後、下段へ下ってくるのですが、この時軽いものは縦に転がってしまいます。稀に途中でひっかかってしまったり、落ちてしまうものも。(縦揺れの振動が最も加わる)
下段では金属ローラー製のコンベアを流れます。
というわけで、なんと、振動だらけなのです!!!

「われもの注意」の赤札を貼ればよいとお思いですか?ダメです!実は「エアキャップ(いわゆる「プチプチ」です)で包まれた軽いものはベルコンに流してよい」というガイドラインがあるのです。なんという恐ろしい事実!
激安楽器は、これらの悪条件がすべて揃っているのです。オークションで落札すると、間違いなく宅配便で送ってきますから、その時点でアウトです。

おわかりいただけましたか?激安楽器はとにかく「壊れたら使い捨て」の覚悟が必要です。よく肝に銘じておいてください。
posted by NS at 12:38| Comment(0) | 楽器の話

2016年01月21日

楽器について

<いくらぐらいするの?>

★超〜激安フルート:9千円台から
→主に中国・台湾・東南アジアが主産地で、寿命は2年以下。壊れた場合の修理は不可。強引にやってもらうと楽器の価格以上の費用がかかります。これらの理由は文末および「激安楽器のこと」をご覧ください。

★国産の初心者用:5万円台から
→寿命は3〜5年。大事に使って7年、奇跡的に10年。手ほどきのために作られた鳴りやすい楽器です。音色作りには向かないそうです。材質は洋銀で、軽くて丈夫ですが、腐食しやすい欠点があります。

★頭部管銀製:15〜20万円ほど
→設計がしっかりしているので、手入れをきちんとやれば一生使えます。本体は洋銀なので、汚れ(皮脂)はきっちりふき取るのがポイント。

★管体銀製:30万円ほど
→総銀は高い、だけど銀の楽器は持ちたい・・・という要望に応えて作られたモデル。メカニズムが洋銀製で価格を抑えていますが、響きに一体感がないため、音づくりに限界があります。この楽器を持ってしまうと、結局買い替えという末路をたどるので、かえって高くつきます。

★憧れの総銀製:40万円〜
→プロも使っているモデルですが、最初は重くてつらいと思います。吹き込むほどに自分の音になってゆく魅力を最も感じ取れます。完全ハンドメイドになると100万を超えてしまう場合もありますが、音色、音質、品質は格段に向上します。

★煌びやかな金の楽器:時価(笑)
→金のフルートといっても部分的に銀を使っていたり、24金製(900万!)だったり、いろいろあります。9金でも100万は覚悟です。金の純度が低いと軽快な音が、高いと重厚な音がします。盗難保険は必須です。

★ベンツが買えちゃう!プラチナ製:500万円
→とにかく重いです!プロでも苦労する楽器です。音はパワフルです。

★素朴な音が魅力の木管フルート
→ハンドメイドのみ。100万以上はしますが、外径が太く持ちやすいという利点もあります。木は湿度変化に敏感なので、手入れをしないと割れてしまいます。

最初から高価な楽器を持つと、何よりもその重さで疲れてしまうと思います。初めての方は、国産の初心者用か頭部管銀製の楽器をおすすめします。

<どうしてこんなに高いの?>

フルートの重さは500グラム程度。金で600グラムを超えてきます。プラチナになると、少年野球のバットを持って吹いているようなものです。貴金属の相場を考えれば、こういう価格になってしまいます。これよりもちょっと割高なのは、よい音を出すための職人さんの技術料と考えてください。細かい部品の素材にこだわったり、それを一つずつ削りだしたり、組み立てたりする手間。音を出す頭部管というフルートの命の部分への技術。実に大変な作業なんです。過当割引のツケは技術に跳ね返ってきますから、新品で5万以下の楽器は何かしら疑うべきだと思います。

<通信販売やオークションで購入することをお考えの方へ>

これは楽器のことをよく知らないと大変なことになります。初心者は絶対に一人で購入、入札しないでください!大手楽器店のオンラインショップでは選別済みですが、保証のことなどをきっちり話をしないと苦労します。返品は基本的にできないものと思ってください。
(一部のオンラインショップや実店舗では、扱い方についてはDVDでの説明しかなく、ジョイントがきつい場合「お客様の取り扱いがよくないから」と修理交換返品を渋るケースもあります)

それからやたらに安いフルート(5万円未満)の場合、独自の構造仕様になっていて、いざトラブルが発生した時はこの発売元に問い合わせないと修理不能ということもあるそうです。もちろん、発売元がある日突然消滅することもありえますから、できれば手を出さないことです。
また、オークションでも大変多くの楽器が出回るようになりましたが、「オークションマニア」といってローンで新品を購入し、それを即座に出品している人も中にはいます。結果的に楽器店で買うよりも高くつくことがありますから、十分注意の上交渉してください。

<材質や値段による音の違い>

金だから、あるいは銀だから「良い」というわけではありません。結果的には、音質は個人の好みで決まるということです。現在でも洋銀ハンドメイドという楽器は存在しますから、洋銀=初心者用という図式は絶対ではありません。かのマルセル・モイーズも洋銀を好んで吹いていたといいます。音質は材質だけでなく、設計や構造によっても変わってきます。また、「リングキイは上級者用」というのも迷信です。これについては書き出すときりがありませんので、ここでは割愛します。

一般的に、材質によってはこんな特徴があります。

*洋銀製=明るくて軽快な音
*木製=素朴で暖かみのある音
*銀製=軟らかくて深みのある音
*金製・プラチナ製=きらびやかで大きな音

なお、モデルタイプ(ライン生産)とハンドメイド(受注生産)では当然違いが出てきます。モデルタイプは大量生産ゆえ、あたりはずれが生じてしまいますから、必ず選別が必要です。購入するときは必ず先生や熟練者を伴って行ってください。
posted by NS at 16:15| Comment(0) | 楽器の話